少々肌寒さを感じるようになった秋の休日、駅前広場は、買い物客や行楽地に出向く人々で賑わいの様相を呈している。
そんな中、ひときわ目を引く女性がひとり。
肩ほどの長さの黒い髪を後ろに縛って、メタルフレームのメガネをかけた知的そうな女性。
柔らかそうなリブ生地のニットを着て、上に薄手の明るい色のコートを羽織っている。
どちらかというと地味めな格好だが、醸し出す雰囲気がどことなく不思議な感じだ。
顔の半分こそ大きなマスクで隠されていて見えないが、メガネの奥から覗く切れ長の瞳が、否応にも美人の予感を抱かせ、胸が高鳴る。
ただ、人間というものは自分に都合よく思考する生き物であって、その直感が当たることのほうが少ない。
失礼ながら、マスクを取ったら残念だった、という目元美人さんも多い以上、今回も期待を裏切られる可能性もある。
期待が大きすぎると、落とされた時の衝撃もひとしおだから、慎重に判断せねば。
あるいは、夢のまま思い出にしてしまうのもいい。続きを読む