トントントン。放課後の保健室にノックをする音が響く。

「はーい。どうぞー。」

 養護教諭の先生が答えると、歩きにくそうに股をおさえて入ってくる男の子。

「せんせい、またがじんじんしてなんかおかしいの。」

「あら、大変。ちょっと見せてくれるかな?」

「……うん。」

  恥ずかしそうに顔を赤くしながらも、股から手をどける男の子。

「あらぁ……あらあら。大変なことになってるわね。」

 一瞬、目を見開いたのち、なぜか笑みを浮かべる先生。男の子の股は、ズボンをはちきらんがごとく立派なテントが張っていた。

「こうなるとかずくんたちにバカにされるの。ぼく、びょうきなのかな?」

 不安そうに尋ねてくる男の子。

「……ねぇ、どうしてこうなったの?なにか覚えがある?」

「……。」

「言いにくいこと?誰にも言わないから、先生にだけ教えてくれないかな?」

「……それでなおるの?」

「うん、だから教えて?」

 男の子は静かに頷くと、下を向いて小声で話しはじめる。

「……たいくのじかんにね、おなじクラスのおんなのこをみるとこうなっちゃうの。」

「……そうなんだ。ほかには?」

「……てれびとか、まんがで、かわいいおんなのこをみたりすると……あと、そのことを考えちゃうとなったりするの。」

 男の子は、恥ずかしさで涙目になっている。

「……それって、ちょっとえっちなおようふくを着てるおんなのこだったり?」

 ちょっと意地悪い質問だ。

「っ!!!」

 男の子は、股をおさえてうずくまってしまう。

「あっ、ごめんね?痛かった?」

 体を震わせながら頷く男の子。

「ちょっと奥の部屋行こうか。歩けるかな?」

 男の子はうつむいたまま立ち上がると、それが意思表示とばかりに、先生から差し出された手をとる。

 

「じゃあ、そこの椅子に座って。」

 カーテンに覆われた部屋。用意されたのは、保健室に似つかわしくないちょっと仰々しい椅子。そんな保健室に似つかわしくない椅子に、恐る恐る座る男の子。

「ごめんね、原因を調べるために、見てほしいものがあるんだ。」

「……それをみればどうしてなったのかわかるの?」

「わかるよ、すぐにわかる。ちょっとこれを見てほしいんだ。」

 そう言って、白衣の下のブラウスのボタンに手をかける先生。外されてゆくボタン。露わになるのは先生の豊満な胸の谷間。

「……っっっ!!!」

 男の子の下半身に急に熱が集まる。

「……どうかな?」

 とどめとばかりに、豊満な胸を腕で持ち上げてずいっと上半身を乗り出してくる先生。押しつぶされた肉の塊が眼前に迫る。

「っっっ!!!!いたいっ、いたいいたいたいっ!!!!」

 今までに感じたことのない暴発しそうなくらい熱が股に流れ込んで、はちきれそうな衝撃が男の子を襲う。床をバタバタと叩き鳴らし、股をおさえて苦しむ男の子。

「……せんせい、ぼくをいじめたいの!?!?」

 怒りと悲しみが混ざった眼差しを向ける男の子。

「ごめんね、でも、原因がわかったから、これから治そうと思うんだけど、どうかな?できそう?」

「……いたくない?」

 男の子は、先程のような苦しみはいやだとばかりにすがるような表情をする。

「……ちょっと、痛いかもしれない。でも、さっきほどひどい痛みじゃないと思うし、すっきりすると思うよ?どうする?やめる?」

「……やる。せんせいしんじる。」

「うん、がんばろうね!!」

 その言葉を聞いて、笑みを浮かべる先生。その裏の顔があることも知らずに?

 

「えっ?なに?うごけないんだけど……。」

 下を脱いで待っていてほしいと言われた男の子。恥ずかしくて準備をする先生と目を合わせずにいたら、いつの間にか手足を固定されていた。手足が動かないと気づいたときにはもう手遅れ。あの仰々しい椅子は拘束椅子だったのだ。

「大丈夫、終わるまでの辛抱だから。」

「っ……こんなの聞いてないって!!」

「はーい、じゃあ、舌噛まないようにマスクをつけましょうね~。」

 先生は、男の子に有無を言わせず開いている口にタオルを噛ませて、頭の後ろで縛ってしまう。

「うむっ。」

 そして、声がもれないように、その上から分厚くて巨大なガーゼのマスクをかける。男の子の顔のほとんどが大きな白いマスクで覆われてしまった。

「うーっ!むむーっ!!」

 必死の抗議もマスクにかき消されて外には聞こえない。
 
「じゃあ、先生はもう少し準備があるからまたあとでね。」

 そう言って、カーテンの外に出る先生。無慈悲にもカーテンは閉まってしまう。

 

 先生が、処置に使う道具を乗せたカートを引いて入ってくる。

「うーっ!うーっ!!」

 必死に抵抗する男の子。けれども、拘束具とマスクに阻まれてなにもできない。

「そんなに怒らないの。すぐに楽になるから。」

 カチャカチャと、カートの上で何かを準備している先生。男の子からは後ろ姿しか見えない。これからなにをされるかわからない。男の子の頭は不安でいっぱいだ。

「ふふふっ、それじゃあ“治療”をはじめましょうか。」

 先生の顔にはマスク。そして両手に薄い医療用の手袋。胸元のブラウスは先程と同じくボタンが開けられ、豊満な胸の谷間が覗いている。マスクは、男の子がつけているガーゼのものではなくて、手袋と同様に薄く伸縮性のある素材のようだ。医療用のものなのだろうか。先生の顔にぴったりと張り付いている。表情すら浮き出るくらいに張り付いたマスク。浮き出る怪しげな笑み。

「うーーっ!!!!」

 男の子は、不安と興奮が入り混じった感情が爆発して声をあげるも、その声は誰にも届かない。“治療”がはじまる。