街のほうに用事があったから、珍しく電車に揺られている。電車にのるのなんて、いつぶりだろうか。車が交通の要である土地柄、大人になってから公共交通機関を使うことはほとんどなくなってしまった。恒常的に利用するのは、学生か、中心街、もしくは遠方への通勤をしている人たちくらいだろう。
 時間帯的に、サラリーマンの帰宅ラッシュには少しはやいくらいだろうか。立っている乗客もちらほらいる程度には混み合っているが、まだまだ圧迫感を感じるほどではない。季節的に、まだまだ日は短く、この時間でも外は真っ暗になってしまっている。乗客の多くを占めているのは、部活帰りの雰囲気の学生たちだろうか。ジャージなり制服なり、学校や部活動の種類によって様々だが、若くて穢れを知らないであろう彼ら彼女らの、無邪気に談笑する姿が妙に遠くに思えた。
 慣れないことをした疲れで、軽い眠気がやってくる。まだまだ降りる駅までは余裕があるので、そのまま眠気に身を任せる。学生たちの談笑と、ガタン、ゴトンという電車の、継ぎ目を乗り越える音を聞きながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。続きを読む